■電話で予約するのは60歳以上の年配者ばかり
ワクチンの接種予約には電話とネットがあり、スマホ、PCを操作できる人はネットで数分で予約を済ませていく。だから、コールセンターでの予約は年配の人、60歳以上が大半だ。
電話予約は聞き取りが多く、希望される医療機関の空き具合も確認しなければならない。そのため、どうしても一件10分はかかってしまう。逆に、10分より短いと「手順どおりの作業をしていない」と管理者に判断され、マークされることもある。
ワクチンはファイザー社製が圧倒的に人気で、体感で9割以上がファイザーを希望した。地元で評判のいい病院の予約枠はまたたく間に埋まる。人気の病院なら、モデルナしか予約枠がなくてもすぐに埋まった。逆に、人気のない病院は、ファイザー枠があっても埋まらない。「あそこの病院以外でお願いします」といった逆指名もあった。
電話の9割は通常対応で済むが、やはり1割くらい面倒くさい人たちがいる。電話口でブチギレるのは、圧倒的に年配の男性が多い。とにかくあらゆる暴言を浴びせられた。
「希望する医療機関がない」
「かかりつけ医が接種していない」
「俺はファイザーしか打たん」
「コロナになったらお前責任とるのか」
「コロナで死んだらお前の責任」
「予約とれたら折り返し電話してくれ」
「お前ら公務員やろ。税金で飯食ってるんやろ(※派遣です)」「お前らでは話にならん。直接病院に行く」
「4回め、5回めなのにまだこんな時間かかるのか」
「俺から市長に言う、俺のことやったら聞きよるから」
どんな文句を言われても、申し訳ございませんとひたすら謝る。鬼のようなクレームは止まらないから、30分以上かかるのは当たり前。「お前がいなければ3人は予約できるのに……」と思いつつ、ひたすら謝り、なんとか予約まで持ち込む。17時の終業後は、浴びせられた暴言をオペレーターどうしで武勇伝として語り合う。
コールセンターは17時で終了なのだが、16時59分50秒という終了ギリギリでかかってくる電話もある。オペレーターにとってはいわゆるハズレ。
みんなが帰って行くなか、予約を取ることになる。内心では、「もう少し考えてくれれば」とは思うが、予約を取る方も必死なのだと考えるしかない。
接種券が届いてすぐ予約してくれるのはいいのだが、電話してきて初めて封を切る人もいた。せめて封を開けて、なかを確認してから電話してほしい。
それと、コールセンターは自治体にあるとは限らない。A市のコールセンターがまったく関係のないB市にある可能性もある。オペレーターがA市の地理に不案内であれば、そこは突っ込んで聞かないでほしい。
■オミクロン株対応ワクチンの登場で予約キャンセルが続出
2022年の年初に発生した「第6波」の原因は、オミクロン株でもBA.1型、7~8月の「第7波」はBA.5型といわれている。9月からBA.1系統のワクチン接種が始まると、従来型で予約した人からキャンセルの嵐。どうせ接種するなら新しい方で、となるのは人間の心理だろうが、キャンセルされたワクチンはどうなったのだろうかと思ってしまう。
10月13日、BA.5型対応ワクチン(BA.4型も含むため、正式名称はBA.4-5対応ワクチン)接種が始まると、BA.1で予約していた人からもキャンセルの嵐。10月にまとめて従来型からBA.4-5に移行しておけばよかったのではないかと、厚労省に文句を言いたくなる。
BA.4-5対応ワクチン接種が始まったことは、当然、その日のテレビで報じられる。すると、年配のおじいちゃん・おばあちゃんのなかには、即座に反応してくる人もいる。テレビの影響力を改めて感じたが、リアルタイムで予約センターに反映されるわけもなく、またしても文句を言われることに。
10月末には、ワクチンの接種間隔が5カ月から3カ月と短くなったが、「どうしてなんですか」と聞かれても、厚労省が決めることなので、現場は理由もわからない。厚労省が決めても、もちろん自治体のホームページにはすぐに反映されず、やはりこちらが怒られる。
「接種してから体調が悪い」という内容の電話も多かった。BA.1、BA.4-5になってから増えたように感じたが、毎日のように「体調が悪い」という話を聞くと、気が滅入る。11月になって、さすがに限界を感じ、100日でこの仕事を終えることにした。
コールセンターは二次請負だ。ある管理者によると「儲かっている」という話だったが、その儲けがこちらに回されることはない。仕事を終えた今、「もうワクチンなんて見たくない」という切ない思いだけが残されたーー。
( SmartFLASH )