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その腰の痛み、前立腺がんの可能性も…名医たちが事例紹介「痛みは体のSOS!」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.01.12 06:00 最終更新日:2023.01.12 06:00
写写丸世代に頻出する “体の不調”……「俺も年取ったなあ」とスルーするのは厳禁。名医でも見逃しややすい、大病のサインがあるのだ。
ゲップ、抜け毛、湿疹、痒み……これらも、軽視できない危険な兆候になり得る。
そして、痛みは体のSOS! 腰痛、頭痛を放置すると手遅れに。
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「こんな些細なことが大病の原因になるなんて……」とおびえる読者も多いはず。
「心臓病などの大病が見逃される場合、原因のひとつは『放散痛』にあります。感覚神経のほとんどは、太い束となって脊髄に繋がっています。そのため、心臓が痛みを訴えているはずなのに、その信号が別の神経に移ってしまうのです」(竹内内科小児科医院 五藤院長)
今回取り上げた以外にも、気になる症状があれば病院に行くべきだ。
「何科を受診するか迷った場合は、消防庁がおこなっている救急安心センター事業(♯7119)に相談するか『総合診療科』を標榜する病院に行けば、大半の疾患に対応してくれるはずです。臨床現場では、患者さんが診察室を出ようとしたときに思い出したように話したエピソードが、診断のきっかけになることもあります。医療業界では、これをドアノブ・クエスチョンといいます。どんな大病であっても、初期症状は些細なものです」(函館稜北病院総合診療科 舛森医師)
今年も健康に過ごせますように!
◎ “寝違えたかな……”首の痛みが解離性動脈瘤で緊急入院
(らいむらクリニック 來村昌紀院長)
「高血圧と頭痛が持病で、血圧を下げる薬を内服している50代の女性。ある日の朝、起きて伸びをしたところ突然、首の右側から後頭部に痛みが走ったそうです。寝違えたと思い、ストレッチをしたり湿布を貼ったりして様子を見ていましたが、痛みは改善せず、血圧も160台に上がっていました。心配になり来院されたので、MRI・MRAの検査をすると、右椎骨動脈の解離(解離性動脈瘤)であることがわかり、緊急入院してもらいました。
解離性動脈瘤は放置すると、脳梗塞やくも膜下出血を起こし、命を落とす危険性がある病気です。首や後頭部の痛みは寝違いだと判断せず、脳外科を受診する必要があります」
◎ “左肩の痛みがじつは……” 狭心症
(竹内内科小児科医院 五藤良将院長)
「左肩の痛みを訴える70代男性がいました。2日前から肩痛が続き、整形外科で五十肩と診断されて湿布を処方されたのですが、症状が再発したために私の内科を受診しました。これは心臓だとピンときたので心電図を取ったところ、狭心症の疑いがあったのですぐに入院となり、精密検査でも狭心症と確定したので治療をおこないました。
心臓病の症状はいろいろとありますが、狭心症や心筋梗塞の症状としてもっとも注意すべきは、締めつけられるような胸の痛みです。しかし、この痛みが別の神経に移ってしまうことがあり、結果、心臓と関係のない肩やあご、歯などに痛みが発生するケースがあります」
◎ “腰が痛い……” で前立腺がん
(池袋消化器内科・泌尿器科クリニック 伊勢呂哲也理事長)
「1カ月前から腰の痛みがあるということで整形外科を受診し、レントゲン検査をしたところ、前立腺がんだとわかった60歳の男性患者がいました。レントゲンを見ると骨の色に異常があり、すでに転移しているので切除できない状態でした。
前立腺がんの場合、自覚症状に乏しく、自分で気がつくのは難しいです。がんの進行とともに顕著に体重が減る方がいますが、その患者さんは体重減少はありませんでした。ただの腰の痛みが、まさかがんだとは考えていなかったそうです。しかし、腰が痛いからといって泌尿器科へ行くというのも難しい。
50代になったら、定期的に前立腺がんを調べるためのPSA検査をすることをおすすめします」
◎ “頭痛がひどい” じつは噛み合わせ
(東京先進医療クリニック歯科・口腔外科 林 伸至診療部長)
「口内環境が、体全体に影響を及ぼすことがあります。虫歯治療で通院されていたある患者さんが、長年肩こりや頭痛がひどく整体に通っているのに改善しないとお話しされていました。歯科医としての経験から、不正咬合が原因だと判断しました。つまり、噛み合わせが悪いことで、頭痛が発生しているんです。実際、不正咬合治療をご希望され、噛み合わせの調整などをおこなったところ、長年の肩こりや頭痛から解放されました。
もちろん、肩こりや頭痛の原因がすべて歯並びや噛み合わせということではありませんが、ほかの治療で改善されない方は、一度歯科医に相談してみるのも手だと思います」
◎ “背中の痛みが” 膵臓がん
(さいたま新都心ジャガークリニック 木下博勝院長)
「外科医がよく遭遇するのは、『背中や腰の痛みが治らない』という患者さんです。私も独立前に副院長として勤務していた病院で、60代の男性の患者さんに背中の痛みがあり、接骨院に通っていたが、1年たっても治らないからと受診されました。すぐに『膵臓がんでは?』とピンときて診察、CT検査をおこなってみると、すでに末期の膵臓がんでした。肝臓に転移もしており、抗がん剤治療で手を尽くしましたが、3カ月ほどで他界されました。
その患者さんは、食欲不振やおなかの張りも不定期にあったものの、それぞれ別の原因だと考えていたそうで、がんの症状だとは考えていなかった。私も医師として非常に残念に思いました」
◎ “重い腰痛”が、じつは大動脈解離
(埼玉みらいクリニック 岡本宗史院長)
「50代のやや肥満傾向の男性で、長引く強い腰痛を主訴に整形外科を受診されました。脂汗をかくほどの痛みで、上の血圧が200近くと高く、また喫煙歴などもあることから、大動脈解離による腰痛を疑いエコー検査をおこなったところ、下行大動脈にフリップ(血管の中膜がさけた状態)を認め、CT検査によって大動脈解離の診断となりました。幸い、解離した範囲が下行大動脈の一部に限局したスタンフォードB型であったため、投薬により血圧を下げ安静にすることで改善を図ることができました。
大動脈解離は、生活習慣病の延長線上で生じるともいえ、中高年の男性に多い疾患になります。高血圧、肥満、糖尿病、喫煙歴などリスクを持つ方で強い腰痛を認めた場合には大動脈解離の可能性があります」
◎ “腰の痛みで夜に目が覚めたら”がんや感染症の可能性
(はく整形外科運動器エコークリニック 白 勝院長)
「腰の痛みで整形外科クリニックを受診される患者さんは非常に多くいらっしゃいますが、私たち開業医はつねに『レッドフラッグサイン(赤旗兆候)』と呼ばれる、がんや感染症、骨折、梗塞などの見逃してはいけない疾患のサインを念頭に置いて診察しています。
レッドフラッグサインとは、具体的には50歳以上、時間や活動性に関係のない痛み、1カ月以上の治療に抵抗する痛み、がんやステロイド治療の既往、急激な体重減少、栄養不良、発熱などが挙げられます。腰痛では接骨院やマッサージに通われる方が多く、その間に病状が進行してしまうケースがあります。
腰痛に加えて、このようなサインを認める場合には重篤な病気が隠れている可能性がありますので、必ず整形外科クリニックを受診してください」
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)