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藤井聡太五冠、朝日杯V…準決勝でメークドラマ「99%負け」から形勢大逆転

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.02.24 16:22 最終更新日:2023.02.24 20:34

藤井聡太五冠、朝日杯V…準決勝でメークドラマ「99%負け」から形勢大逆転

藤井聡太五冠(写真提供/日本将棋連盟)

 

 将棋界の若き王者・藤井聡太五冠が、またひとつ栄冠の数を増やした。

 

 2月23日におこなわれた第16回朝日杯将棋オープン戦の準決勝と決勝。藤井は豊島将之九段、渡辺明名人を続けて下し、2年ぶり4回めの優勝を飾った。

 

 現在タイトル戦において六冠を目指す立場となった藤井は、早指しのトーナメントでも無類の強さを誇っている。今年度はすでに銀河戦、日本シリーズ、そして朝日杯で優勝。さらに現在ベスト4のNHKまで優勝すると、史上初めて、これら4棋戦をすべて制する「グランドスラム」を達成する。信じられないような強さだ。

 

 

 とはいえ、今期朝日杯における藤井の戦いぶりは、決して順調なものではなかった。それどころか、絶体絶命のピンチを幾度も切り抜けて、ようやく頂点にたどりついたといえる。

 

 準決勝の豊島戦もまた、劇的な逆転勝利だった。

 

 先手番を得た藤井は、現代将棋界のメジャー戦法である角換わり腰掛銀を採用。対して豊島もまた、AIを駆使しながら、事前に深い手順まで研究しているところだろう。両者ともにさほど時間を使わないまま、戦いは起こる。一手でも重大なミスが出ればたちまち致命的な差がつきそうな進行ながら、差はつくことなく、中盤の奥深いところまで進んでいった。

 

 100手を過ぎたところでも形勢は互角。ただし、藤井が持ち時間の40分を使い切っていたのに対して、豊島は23分を残していた。

 

藤井「お互いの玉が薄い形になって。ちょっとそうですね。なんというか、判断のつかないまま指していた局面が多かったんですけど」

 

 豊島は時間を投入して考え、時間を使い切り、難解な終盤戦に入った。やがて豊島は藤井の攻めをしのいで反撃に転じ、優位に立つ。

 

藤井「途中から、こちらの攻めに対して的確に対応されてしまって。少しずつ苦しくしてしまったのかなというふうに思っていました」

 

 最終盤、形勢ははっきりと豊島勝勢となった。AIが示す「勝率」は豊島99%。なにしろ藤井玉には詰みが生じている。時間がなく、秒に追われながらも、豊島は藤井玉を追い詰めていく。しかし、そこでドラマが起こった。

 

 151手め。藤井は歩の王手を強く取った。この手は観戦者だけでなく、対局者である豊島の意表も突いた。なぜならば、逃げた方が詰みづらいように思われるからだ。そして、その順が詰むことは豊島も見切っていた。

 

 藤井玉には複数の詰み筋が生じている。飛車を回ってもいいし、馬を引いてもいい。実戦で豊島は後者を選んだ。そのあとで、前者でもきれいに詰んでいたのに気づいたのが、実戦心理のアヤであり、豊島の不幸となった。

 

豊島「この詰み筋があったなと思って後悔してしまったので」

 

 運命を決したのは154手めだった。ここでの正解手はなにか。詰将棋の問題として出されれば、豊島ほどのトップ棋士でなくとも、ある程度の棋力があるファンならば正解できそうな難易度だ。タダで取られるところに飛車を打てば、藤井玉はきれいに詰んでいる。ふだんの豊島ならば、見逃さなかっただろう。しかし、それを逃してしまうことから、実戦の過酷さが伝わる。

 

 豊島は金を打って王手をかけた。形勢はそこで大逆転。三段めに引いた藤井玉はもうつかまらない。

 

豊島「ひどかったですね」

 

 いつも冷静沈着な豊島が終局後、なんどかそう言って苦笑するほどの大逆転劇となった。

 

 藤井はこの日、豊島、渡辺にいずれも先手番で勝った。これで先手番は26連勝だ。

 

 休む間もなく藤井は、2月25日・26日におこなわれるALSOK杯王将戦七番勝負第5局に望む。先手番の藤井が、先に3勝めをあげられるかどうか。相手は羽生善治九段。先手番28連勝という記録の持ち主でもある。年度末に向けて、将棋界もいよいよ大詰めを迎える。

 

文・相川清英

( SmartFLASH )

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