■(6)メンタル疾患のリスクが高まる
オーストラリア、タスマニア大学でおこなわれた研究によって、朝食を頻繁に抜いている人は、うつ病のリスクが高くなることが明らかになっています。朝食を食べない人は、体内時計が乱れやすくなるので、睡眠障害になりやすく、結果として、メンタル疾患のリスクが高まるというのです。
メンタル疾患の治療法についての教科書を読むと、必ず「一日3食を取ること」と書いてあります。メンタル疾患の人は、朝食だけでなく、ご飯を食べない傾向にあるので、栄養不足に陥っていることが多いのです。
■(7)成績が悪くなる
文科省の「全国学力・学習状況調査」によると、毎日朝ご飯を食べている生徒(中学3年生)は、食べていない生徒よりも平均正答率が高いという結果が出ています(2019年度)。
国語の平均正答率で比較すると、「毎日食べている」と答えた生徒と「まったく食べていない」と答えた生徒では、14.2%もの差が見られました。100点満点で14点差です。朝食を食べないと、脳のエネルギーが補充されないので、午前中の集中力が高まらない。当然、授業にも集中できないのです。
■朝食に何を食べる?
ここまで述べてきたことから、「朝食は抜かずに、食べたほうがいい」。これが結論です。
そこでここからは「朝は何を食べるのがいいのか?」を考えてみましょう。
■(1)歯応えのあるもの
歯応えのあるものを、よく噛んで食べることをおすすめします。よく噛んで食べるだけで、「幸福」の脳内物質「セロトニン」の分泌が活性化するので、朝からやる気が出ます。また、咀嚼(そしゃく)は脳を刺激しますから、脳が目覚めるのです。
やわらかい菓子パン、牛乳をかけたシリアル、お茶漬けなどは、ササッと食べられるので、朝食に好まれますが、歯応えがあまりないので、ほかに歯応えのある食べものが必要です。
■(2)栄養バランスを重視
炭水化物、タンパク質、脂質に加え、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素もしっかり取りましょう。おすすめなのは、玄米、野菜、フルーツです。玄米はビタミンC以外のほとんどの栄養素を含んでおり、ミネラルも豊富です。
野菜にはビタミン、ミネラル、食物繊維、葉酸がたくさん含まれています。サラダで食べれば、調理の手間も不要。ただ、市販のドレッシングには「悪い油」「塩分」が多く含まれているので、私はオリーブオイルだけをかけます。
フルーツには脂肪になりやすい果糖が入っているため、避ける人も多いのですが、バナナ1本、リンゴ2分の1個程度なら、まったく問題はありません。調理も不要で、ビタミンC、食物繊維を簡単に補給できるので便利です。バナナは、セロトニンの原料となる「トリプトファン」を豊富に含んでいます。メンタルがお疲れの人には、おすすめです。
タンパク質は「満腹ホルモン」といわれる「コレシストニキン」の分泌を促し、食欲を抑制してくれるので、ダイエット中の人にはおすすめです。理想のメニューは焼き魚ですが、作る時間がないときのおすすめは、納豆と卵です。
私の鉄板の朝食メニューは、玄米、納豆、卵です。納豆や卵には、タンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれていて、まさに「食べるサプリメント」。ご飯にかけるだけで美味しく食べられます。
■(3)添加物が含まれていないもの
朝食代わりに、野菜ジュースやスムージーを飲む人がいます。商品にもよりますが、砂糖が添加されているものが多いので、糖分の取りすぎには要注意。
また、朝食といえばベーコンエッグやハムエッグなどが定番。ただ、ベーコンやハムなどの加工肉には、飽和脂肪酸、食品保存料や食品添加物などの健康リスクに影響を及ぼす物質が多く含まれているので、毎朝食べるのは避けたほうがいいかもしれません。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし