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ファミコンソフト「箱&説明書つき」1252本コンプリート達成者が語る“愛と執念の22年”【ファミコンの日】
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.07.15 16:57 最終更新日:2023.07.15 16:59
1983年7月15日、任天堂から発売されたファミリーコンピュータ(ファミコン)といえば、家庭用ゲーム機を世に根づかせた、偉大なゲームハードだ。
そのソフトからは『スーパーマリオ』や『ドラゴンクエスト』『FF(ファイナル・ファンタジー)』など、現在も続く人気シリーズの数々が生まれたが、なかには、よほどのマニアでなければ知らないタイトルも多くある。それもそのはず、ファミコンソフトの総タイトル数は、じつに1252タイトル!(カセット1053本+ディスクシステム199本)。発売当時、小中学生を過ごした世代でも、名前も聞いたことのないようなタイトルも無数にあるのだ。
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しかし、そのタイトルのすべて(箱・説明書付き)を、ファミコン直撃世代でもない36歳にしてコンプリートしてしまった青年がいる。レトロゲームコレクターでYouTuberのSOMARI【ソマリ・チャンネル】こと、SOMARI氏(@smr_an_fami)だ。
SOMARI氏は2023年5月7日、自身のTwitterにて、床一面に敷き詰められたファミコンソフトのコレクションととともに、
《【ご報告】2023年5月7日、ファミリーコンピュータ用ソフト(カセット&ディスク)市販品 全1252タイトルを箱・説明書付でコンプリートしました!
最後に入手したのは『谷川浩司の将棋指南II 新版 詰め将棋・次の一手』(¥491,500)、収集に費やした期間は22年5ヶ月です》
と、ツイート。この偉業達成に、ツイートは343万回以上のインプレッションを記録。コメント欄には、
《ファミコン博物館を建ててください。クラウドファンディングやりましょう!》
《コンプリートおめでとうございます! 1252タイトルを箱・説明書付きの景色、素晴らしいですね!!圧巻です!》
《凄すぎる… 22年もかけて収集されていたなんて、尊敬です》
など、その功績を称える声であふれた。
22年かかったという、全ソフトコンプリートにいたるまでの道のりをSOMARI氏に聞いた。
――ファミコンソフトを集めようと思ったきっかけは?
「最初に持っていたハードはスーパーファミコンなんですけど、2000年、僕が中学1年のときにファミコン本体を買って。安いソフトを中古ショップで買って、遊んで……というのを繰り返していくうちに、どんどんファミコンの魅力にハマっていったんです。いろいろ調べるうちに、ファミコンソフトを全部集めたというコレクターさんの存在なんかも知って、自分も集めてみたいな、とあこがれを持ったのがきっかけですね」
――36歳だと、直撃世代じゃないから「後追い」ですよね? 周囲にファミコンをやっている人は、あまりいなかったのではないでしょうか?
「そうですね。同世代だとNINTENDO64とかプレイステーション(プレステ)とか、そんな感じだったんで。僕が初めてファミコンを買った2000年には、プレステ2が出てましたからね(笑)。いちばん最初に買ったファミコン用ソフトは『機動戦士Zガンダム・ホットスクランブル』(1986年発売)でした」
――ファミコンのどういうところにハマったんですか?
「やっぱり8ビット特有のドット絵と、音ですよね。独特のサウンドも琴線にふれました。僕はどちらかというと、RPGやシミュレーションゲームより、アクションとかシューティンのほうが好きなんですよ。そういうゲームが、少ないボタンながらもシンプルに遊べて、なおかつ楽しいところが魅力的でした」
全ソフトを集めるまで22年5カ月を要したSOMARI氏だが、学生時代はお金もないため、高いソフトには手が届くはずもなく、本格的にソフトを集め出したのは社会人になってから。さらに今回、SOMARI氏が達成したのは「箱と説明書つき」のフルコンプリートだが、箱と説明書つきでなければ、2019年の時点で、すでにカセットだけ(1053本)のコンプリートは達成していたという。
「最初はディスクは集めていなかったので、カセットだけなら2019年3月に全部集め終えたんです。ただ、その時点で箱・説明書ありは200本弱で、残りの800本以上は箱・説明書なしだったので、ここまで来たら、箱と説明書つきにもこだわりたいなと思いまして。それで、一から全部買い直しました。心が折れそうになった瞬間もありますけど、それを支えたのはファミコン愛と、途中からはもう執念でしたね(笑)」
――いちばん見つからなかったソフトって、なんですか?
「やはり、最後の1本となった『谷川浩司の将棋指南II 新版 詰め将棋・次の一手』という、ツイートもさせていただいたソフトですね。僕が知る限りでは、専門店でも1度も見たことがないぐらい貴重なソフトだったので、最後までなかなか見つかりませんでした。今回、たまたまネットオークションで49万1500円で落札できたんですけど、オークションサイトによっては200万円以上の値段で売っているところもありますし。現在、プレミアがついてもっと高いソフトもありますけど、自分が買ったなかでは、それを超えるものはないですね」
――いま所有されているものの中で、プレミアがついて高そうなものって、なんですか?
「圧倒的に高いのが『バトルラッシュ Build Up Robot Tournament』というソフトです。いま、ネットオークションに出ると、120万円以上で取引されていますね」
下世話ながら、フルコンプにトータルでかかった金額を聞くと、「正式にはつけてないですけど……」と前置きしながら、「ざっと400万から500万円の間ですかね」と答えたSOMARI氏。フルコンプを達成したいまの気持ちを聞くと……。
「それこそコンプ達成のために、ファミコン以外のそれまで集めていたソフトだったり、CDやレコードを売却したり、ボーナスもほぼ全部、突っ込んだりしてきましたからね。
全部そろった直後は達成感よりも、これで全部そろっちゃったんだな……という寂しさのほうが強かったですね。それまでは、本当にゲームショップめぐりで、それこそ秋葉原に週2,3回行ったりとかしてたんで。少し時間がたったいまは、満足感で満ちあふれてますけど。大げさじゃなく、人生の半分以上をファミコンに捧げてきた、みたいなところがありますからね(笑)」
過去にもフルコンプを達成した人はいる。しかし、30代でフルコンプを達成した人はおそらく前例がないのではないだろうか。ファミコンが生まれた年(1983年)に生まれてすらいなかった青年が、ファミコン40周年の年に達成した、ひとつの記録。その奇跡と軌跡に、素直に拍手を贈りたい。
( SmartFLASH )