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テレ朝記者が明かす「福島第1原発」廃炉処理が進まない5つの理由

社会・政治 投稿日:2021.03.11 06:00FLASH編集部

テレ朝記者が明かす「福島第1原発」廃炉処理が進まない5つの理由

 

 3・11、東日本大震災発生から10年がたつが、被災地の完全復興にはいまだ至っていない。

 

 そして、水素爆発、炉心溶融(メルトダウン)を起こした福島第一原子力発電所の廃炉処理も暗中模索のままだ。

 

「取材をすればするほど、『廃炉(ができるの)は虚構』なんだと感じざるを得ません」

 

 こう話すのは、事故発生直後から取材を続け、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)などに出演、田原総一朗氏ら論客と廃炉問題で激論を交わすテレビ朝日報道局社会部の吉野実記者(56)だ。

 

 

 10年かかっても廃炉に向けた道筋すら見えないのは、何が原因なのか。吉野記者は「5つの理由」があるという。

 

■理由1:高い放射線量が原因で作業ができない

 

 福島第一原発の事故発生当時、海側の地域では放射線量が毎時1ミリシーベルトを超えていた。これは1時間で、一般人の年間被ばく量に達する値である。

 

 吉野記者によると、使用済み核燃料を回収するエリアの放射線量は、「いまだに高いままです。格納容器内はさらに高く人間の代わりに投入しているロボットも放射線の影響で頻繁に故障するほど」だという。

 

「2021年2月28日、やっと3号機のプールに残っていた使用済み核燃料566体の搬出が終了しました。しかし今なお1、2号機合わせて1007体の使用済み核燃料が残っています。

 

 そのため燃料プールがあるオペレーティングフロアなどの線量は、1号機で毎時200ミリシーベルト、2号機で毎時150ミリシーベルトあります。

 

 また、原子炉内には冷えて固まった燃料デブリも大量に残っているため、炉内はさらに放射線量が高くなっています。放射線を抑えるために炉内を水で浸し、デブリを取り出す方法を採用しようとしましたが、格納容器が損傷していたためできませんでした。

 

 この放射線量が廃炉を阻む最大要因。放射線を防ぐ方法がないのが現状です。1号機のオペレーティングフロアは崩壊した建屋の瓦礫処理をするだけです」(吉野記者、以下同)

 

■理由2:記者たちが唖然としたトンデモ「冷却作戦」

 

 東京電力は2016年3月、約350億円の国の予算を使い、建屋内への地下水流入を防ぐ目的で「凍土方式の遮水壁」の凍結運転を開始した。

 

 冷凍機などで冷却した冷媒を圧送、地中に配置した凍結管の中を循環させて周辺の地盤を凍結させるというもので、2017年11月に「ほぼ、凍結完了しました」と発表された。

 

 だが、吉野記者によると、この方式に決定し、着工されるまで信じられない愚策を続けていたという。

 

「原子力規制委員会は、配管トレンチ(坑道)に溜まった高濃度汚染水を抜かない限り凍土遮水壁の着手はできないと主張しました。

 

 そのためには汚染水が漏出している開口部を塞がなければなりません。そこで、東電が最初に実行したのが『氷の大量投入』です。『氷を配管に入れれば、汚染水は凍るだろう』という発想ですが、流体の水を氷で凍らせるなんてできません。

 

『一流大学を出た技術者が、どうしてそんなことに気づかないんだろう』と記者たちも発表を聞いて唖然としました」

 

 その後も、東京電力によるトンデモ策は続く。

 

「次は『(配管への)ドライアイスの投入』を発表しました。その結果は、『投入したが配管にドライアイスが詰まってしまい、続けることを断念しました』というもの。当時、会見場にいた記者たちのあきれ顔が甦ります。

 

 そもそも原子力規制委員会は『凍土壁は止水するものではなく、流量を低減させる程度にしかならない』と冷ややかでした。東電がこうした意見に耳を貸さなかったことがこの結果になったのではないでしょうか」

 

 こうした失敗の後、前出の「凍土方式の遮水壁」が実施され、2018年3月に効果の検証作業がおこなわれた。

 

「凍結開始前の汚染水発生量は一日約490トンでしたが320トンほど減少しました。

 

 凍土壁単独の汚染水発生抑制効果は30%の95トンとされ、東電が『切り札』とした方式でしたが、並行して実施されたほかの方法の効果のほうが上でした。2020年度の一日あたりの汚染水発生量は140トン。東電は『多くは雨水』と、じつに苦しい言い訳をしていました」

 

 現在、この冷却のため年間10億円の電気代が使われている。「東電内でも(負担している)この予算をほかの対策にまわせるんじゃないかといわれています」

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