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政治主導はいいが私物化はアカン!安倍政権のおかげで政治も司法もマスコミも忖度ばかり【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第11回】

社会・政治 投稿日:2023.07.28 06:00FLASH編集部

政治主導はいいが私物化はアカン!安倍政権のおかげで政治も司法もマスコミも忖度ばかり【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第11回】

萩生田光一政調会長がブログに掲載した写真。加計孝太郎・加計学園理事長(中央)とともにバーベキューを楽しむ安倍元総理

 

 司法修習同期の “旧友” 橋下徹くんと、7月15日に再び対談する機会があり、そのイベントは開始前から、ある種、おおいに盛り上がった。

 

 橋下くんが松井一郎前大阪市長とともに作ろうとしたコンサル会社「松井橋下アソシエイツ」に関し、私が「事実上の口利き」「情けない気持ちになった」とツイートしたことで、彼が激怒し、打ち合わせなしのぶっつけ本番になったのだ。

 

 橋下くんは対談の冒頭から、今回の趣旨とは関係ない辻元清美さん(参議院議員)の名前を出して一方的にまくし立て、私は正直あっけに取られました。

 

 

 私が言い負かされたように読めるネット記事もありましたが、あまりに筋違いで “子供のケンカ” には乗っても仕方ないので、反論しなかっただけのことです。

 

 翌日、私はツイッターで「情けない気持ち」は撤回しましたが、じつは橋下くんが怒ったのはそこやない。「事実上の口利き」という指摘が、まさに図星やったんです。そこは議論したくないから、論点をずらしたわけ。結局、本人は会社設立を中止した。

 

 考えてみてください。元大阪市長と元大阪府知事の2人が、ベンチャーや中小企業と行政機関の橋渡しをするというふれ込みやから、そんなもん役所側は忖度するに決まってるやん。市や府には、2人の息がかかった職員がたくさんいるんやから。「この業者を頼む」とか言わんかったところで、職員が気にしないわけがない。だから「事実上の口利き」なんです。

 

 忖度といえば、森友・加計学園の「モリカケ問題」。その真相は不明ですが、「忖度政治」は安倍政権の代名詞で、それは今も残っています。

 

 キーワードは人事権。国会議員に関していえば、選挙での公認権を総理総裁が握るようになった。議員は党の公認がほしいために、おかしいことはおかしいと、はっきり物を言う者がいなくなってしまった。加えて、大臣の人事権も総理にあるから、大臣ポストを狙うベテラン議員による忖度が当たり前になってしまったわけです。

 

 影響は、司法にも及んでいる。安倍政権下では、元東京高検検事長の賭け麻雀疑惑が一度不起訴になった。さらに検察だけでなく、裁判所も忖度しまくっています。

 

 私は官僚や検察、裁判所に友人や後輩がたくさんいて、彼らと飲むと「最高裁の判決が自民党を怒らせる判決になるわけがない」と、平気で話してます。裁判官の人事や人件費などを決めるのは実質的に自民党やから、気を遣って当然というのが彼らの本音。

 

 最高裁の裁判官も、総理が任命します。かつてと違って、安倍さん以降は総理の意向が強く反映されるようになった。安倍さんが2016年に最高裁判事に任命したのは、加計学園の監事(業務や財産の監査役)をしていた安倍さんに近い人物でした。

 

 アメリカでは、共和党政権なら共和党寄りの、民主党政権なら民主党寄りの裁判官が選ばれると言われますが、日本でも安倍さんの意向で裁判官が選ばれているわけやから、ことモリカケに関しては、最高裁が中立なわけがない。

 

 じつは私は、忖度政治そのものは必ずしもマイナスばかりだとは思っていません。忖度政治は、言い換えると政治主導にも繋がる。政治家が責任を持って政策の方向転換を図ったり、新たな方針を打ち出すことは間違ったことじゃない。問題はその方向性です。

 

 明石市の場合、私が市長だった12年間で、市役所の体質は市民目線の仕事ぶりに大きく変わった。私が市長になる前は、市役所の窓口に行っても、職員は横を向いてぺちゃくちゃしゃべっていたけど、今はエスカレーターで上がった瞬間に、職員が飛んでくるようになった。これは私の指示ではなく、職員が市長のスタンスに忖度した結果です。

 

 他方、安倍政権では、政治の「私物化」の方向に働いた。総理が人事権を持ち、言うことを聞かないと出世させないため、官僚はせっせと忖度を繰り返してきたのです。

 

 それが、モリカケ問題や「解釈改憲」を生んだ。

 

 モリカケ問題は、実際に安倍夫妻がどの程度関わったかについては、すでに安倍さんは亡くなってしまったこともあり、真実はわかりません。ただ少なくとも、財務省が公文書を書き換えて安倍夫妻を守ろうとしたことは客観的事実。忖度があったことは明々白々で、その結果、人一人の命が失われたわけですから、これは闇に葬っていい話ではない。

 

 文書改ざんを命じられたことを苦に命を絶った赤木俊夫さんの奥さんが、私が市長のときに明石市役所に訪ねて来られ、お話を聞いたことがあります。また、モリカケ報道でスクープを連発した元NHK記者の相澤冬樹さんは、私の大学時代のクラスメートであり、NHKに同期入局した親しい間柄です。そのこともあり、モリカケ事件を思い入れをもって見ていました。

 

 ところが、NHKは相澤さんを、記事を書けない部署に追いやり、辞めざるを得ないようにした。安倍さんを怒らせるとまずいから、モリカケ報道を自主規制したということでしょう。これはメディアの自殺行為。マスコミにおける安倍政権の負の遺産です。

 

 解釈改憲については、内閣法制局という「法の番人」の役割が崩壊した。集団的自衛権の行使容認は、従来の法解釈では成り立たなかったのに、総理が自分に忠実な人物を内閣法制局長官に大抜擢したことで、憲法の解釈を一瞬で変えてしまったんです。

 

 こうした忖度政治を含めて、橋下くんは「安倍政権イエス」の立場ですが、私はノー。彼と私は目指すところが違うんやと、今回の対談で再認識させられました。

 

 ただ、彼の突破力や影響力は絶大。それを国民のために生かしてほしい。その思いは変わりません。今後も議論したいので、私からシャッターを下ろす気はない。彼が応じるなら、今度は「FLASH」誌上で “再戦” しよかな。

( 週刊FLASH 2023年8月8日号 )

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