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MLB「親子で活躍」が多いワケ…「試合前に一緒に練習」「夏休みは父の本拠地へ帯同」元通訳が指摘

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.04.18 14:38 最終更新日:2023.04.18 14:41

MLB「親子で活躍」が多いワケ…「試合前に一緒に練習」「夏休みは父の本拠地へ帯同」元通訳が指摘

開幕戦の始球式後に記念撮影するゲレーロ父(真ん中)と息子(左)、トラウト(右)(写真・aflo)

 

 現地時間4月7日、ロサンゼルス・エンジェルスは本拠地開幕戦を迎え、セレモニーがおこなわれるなか、始球式に登場したのはブラディミール・ゲレーロ氏。エンジェルスでは6年間プレーし、特に2004年は39本塁打、打率.337でMVPを獲得してチームの地区優勝に貢献したレジェンドだ。

 

 始球式の捕手はエンジェルスの背番号27を引き継いだマイク・トラウト選手が務め、この日の対戦相手トロント・ブルージェイズに所属するブラディミール・ゲレーロJr.選手と3人で記念撮影をしていた。試合中は、一塁に出塁した大谷翔平選手が、一塁手のゲレーロJr.選手と談笑するシーンも見られた。

 

 

 ゲレーロ親子はMLBでも屈指の、親子そろって大活躍しているケースと言っていいだろう。

 

 父はMLB実働16年で通算449本塁打ながら本塁打王のタイトルを手にすることはなかったが、息子は2021年に48本塁打でこのタイトルを獲得した。父の単年での最多本塁打は2000年の44本(モントリオール・エキスポズ時代)だから、息子はこれも上回ったことになる。

 

 もっとも、父は通算181盗塁と足も速く、2002年には40盗塁を記録している。外野手で誰よりも強肩、いわゆる「鬼肩」だったが、本塁への送球が勢い余ってスタンドに入ってしまうシーンを見た記憶がある。なお、通算打率.318はMLB歴代で42位という高打率。2018年に殿堂入りした。

 

 じつは、ブルージェイズにはこのほかにも、MLBで大活躍した選手の息子たちが活躍している。ショートを守るボー・ビシェット選手は、2021年、2022年と連続でアメリカンリーグの最多安打を記録しているうえに、それぞれ本塁打は29本、24本と長打力もある。

 

 その父のダンテ・ビシェット氏は、実働14年で通算打率.299、274本塁打、152盗塁。コロラド・ロッキーズ時代の1995年には40本塁打、128打点で2冠王に輝いた。キャリアのほとんどを外野手として過ごした。

 

 また、セカンドや外野を守るキャバン・ビジオ選手は、2019年に100試合で16本塁打と素晴らしいデビューを果たしたが、その後はやや成績が低迷。

 

 一方、父のクレイグ・ビジオ氏はおもにセカンドとして活躍し、MLB実働20年で3000安打を達成。2015年に殿堂入りした。1998年には51二塁打、50盗塁を記録し、MLB史上二人目で82年ぶりとなる50二塁打50盗塁(50-50クラブ)達成者となり、野茂英雄氏が比較的苦手にしていたヒューストン・アストロズの1番打者と言えばクレイグ氏と、覚えているファンも多いのではないか。

 

 そのほか、有名なところで言えば、ボビー、バリーのボンズ親子や、ケン・グリフィーSr.とJr.の親子など、MLBでは親子で大活躍するケースは珍しくない。詳しいファンなら何組も思いつく。

 

 これに対してNPBでは、親子でプロ野球選手になるケースすら少ないように感じる。これには何か理由があるのだろうか。

 

 私はMLBで通訳をした経験から、思い当たる節がある。MLBでは、選手が子どもたちを球場に連れてきて、チーム練習の前に親子で練習したり、打撃練習の球拾いなどをする光景が当たり前になっている。同じフィールドに入って、メジャーリーガーたちの打撃や守備を間近で見られるのだ。

 

 しかも、子どもたちがお父さん(選手)と一緒に過ごす期間が長い。キャリアを積んだ選手はキャンプ地であるフロリダやアリゾナに居を構えることが多いし、子どもの学校が夏休みになれば、家族みんなで所属チームの本拠地に住む。

 

 アメリカの学校の夏休みは3カ月くらいあり、チームの遠征中を除くと約1カ月半もの間、お父さんにくっついて最高の環境で練習し、さまざまなお手本を見ることができるのである。

 

 かつて野村克也監督は、「学ぶは真似ぶ、でもある。まずはお手本となる選手の真似から入るのも、上達のための一つの方法」とおっしゃっていた。MLBの一流選手の子どもたちは、その点で最高の環境にいる。

 

 今後、日本人メジャーリーガーがますます増え、MLBで父親なみに大活躍する日本人選手の姿を見られるかもしれない。

 

文・小島一貴

( SmartFLASH )

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