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岡部たかし、50歳で超遅咲きのブレイク中。その理由はーー「 “売れること” をあきらめたんです」

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.05.14 11:00FLASH編集部

岡部たかし、50歳で超遅咲きのブレイク中。その理由はーー「 “売れること” をあきらめたんです」

岡部たかし

 

「このお店には4年前から通っています。僕はネットでは調べないで、門構えというか、雰囲気でお店を選ぶんです。ここはいつも混んでいて、最初はなかなか入店できなかったのですが、何度も訪れて常連になったんです」

 

 そう言って屈託なく笑うのは、俳優の岡部たかしバイプレイヤーとして、さまざまなドラマや映画に出演する岡部だが、東京・西永福にあるこの「やきとり 波田野」では「近所の暇なおっちゃん」と思われていた。

 

 

「週に3回くらい来ては、必ず肉ナンコツを、頼んでいたんです。そしたら、お店の人や常連客の間であだ名が『ナンコツ』になってました」

 

 俳優として知られるようになったのは、ごく最近だ。

 

「今年、共演者の女優さんと来店したら、常連さんに『ナンコツさんは、芸能関係の方だったんですか?』と。

 

 常連さんはそのドラマを全話観ていて、毎回僕が出演していたにもかかわらず認識していなかった(笑)。でも、それ以降は、俳優だと知っていただけましたね」

 

 岡部は昨年、話題を呼んだドラマ『エルピス -希望、あるいは災い-』で演じたテレビプロデューサー役で注目を集めた。放送回を重ねるごとに岡部の出番は増え、最終回では主演の長澤まさみとともに、ラストシーンを盛り上げた。このドラマでの高評価で、「遅咲き俳優」ともいわれる。今年はNHKの次期朝ドラ出演も決まり、出演オファーが増え続けている。順風満帆だ。

 

「今年になって、急に忙しくなりましたね。昨年出演した『あなたのブツが、ここに』(NHK)と『エルピス』が、自分の中で達成感もあり、以前より認知されているという実感はあります。これが30歳なら浮かれたかもですが、もう50歳なので『わー、売れた』というような狂騒はないです」

 

 雑誌の取材は、ほぼ初めての経験だという。

 

「25年間も役者をやっていて、週刊誌のインタビュー取材なんて受けたこともなかった。こんなに取材などの仕事も増えるのだと、日々、反響を不思議に感じています」

 

 自身はこう語るが、周囲の人間はブレイクを予感していた。

 

「『エルピス』の脚本家の渡辺あやさんが、『あの役は岡部さんで見えた』と言ってくださったそうなんです。大根仁監督にも『今回は、主演の長澤まさみに軽く絡むだけの役ではない。岡部さん、これでブレイクしないなら、いつブレイクするの?』と撮影前から言われました。

 

 ドラマを観ていただいた先輩俳優の古舘寛治さんからも『岡ちゃん、お前、ついに来たな』と言っていただき、この店で乾杯しました。そういった期待は嬉しかったですね」

 

■現実逃避のひとつで役者を選んだ

 

 25年前、岡部は地元の和歌山でサラリーマンをしていた。俳優とは縁遠い生活だった。

 

「建設会社で1年間、現場監督をやっていました。そのあとは喫茶店でバイトしたり、トラックの運転手をやったり、ふらふらしていましたね。

 

 24歳のとき、地元の友達が『東京に行く』と言うので、それに合わせて上京したんです。ぼんやりと『役者になりたい』という気持ちはありましたが、大志はまったくなかった。現実逃避のひとつとして、役者を選んだ部分もありました」

 

 上京した岡部は柄本明率いる「劇団東京乾電池」のオーディションを受ける。

 

「東京乾電池を選んだ理由も月謝がほかの有名劇団より安かったから。特技が尾崎豊のものまねだったので、オーディションでは『I LOVE YOU』をひたすら真剣に歌い、合格しました」

 

 岡部は同劇団に3年間在籍。「ぼんやり」とだが自分のやりたいことを見つけた。

 

「自分としては『コントやおもしろいことを役者としてやりたい』という気持ちがさらに強くなったんです。お笑いではなく、『おもしろい』と思われる役者になりたかった」

 

 アルバイトを続けながら舞台に立つ日々も、まったく苦ではなかった。

 

「大志を抱いていないので、挫折を感じなかったんですよ。バイトしながら好きなことをずっとやっていくのだと思っていました。

 

 40歳まで宅配のバイトをしながら、役者をやってましたから」

 

 だが同時に、テレビ、映画で活躍する俳優に対しての嫉妬は確かにあった。

 

「当時は自分の現状から目を背けて、世間が悪いと言い訳している部分がありました。『世間に受け入れられ、売れる俳優は、どうせ大手事務所の人だ』と自分に言い聞かせていました」

 

 そんな日々のなかで、希望もあった。それが古舘の存在だ。

 

「40歳を過ぎた古舘さんが、どんどん世に出てきて、テレビや映画で欠かせないバイプレイヤーになりました。その姿が本当に希望でした。

 

 所属する事務所の大小など関係なく、僕が本当におもしろい俳優だと思っている古舘さんが売れたことが、励みになったんです」

 

 そして、古舘と同じ40代になったとき、岡部もきっかけをつかんだ。その理由を「売れることをあきらめたから」と岡部は話した。

 

「30代のころは『爪痕を残さないと駄目だ』と思っていた部分があったんです。それで役の中にエキセントリックな部分をあえて入れて演じていたりしていました。

 

 でもそれは世間に向けただけのものでしかなく、俳優として間違えたアピールだったと、今はわかります。

 

 本当はまず役と向き合う自分がいて、目の前の現場とスタッフがいて、最後に世間の評価があるんです。40代になって、やっとそれがわかりました。いかに、共演者やスタッフに『(この俳優は)やりやすい、おもしろい』と思ってもらえるかが大切で、売れるという世間の評価はその次なんです。だから、売れることを考えるのをやめるというか、あきらめました(笑)。

 

 もちろん、世間的に売れることと、おもしろい俳優であることが一致したら素晴らしい俳優人生だと思うんですが」

 

 50歳を迎え、岡部の「おもしろい」と世間的に「売れる」が一致し始めている。

 

「自分がおもしろいと思うことが、世間に届く。ずっと演じてきてそれが間違っていなかったとしたら嬉しいですね」

 

 俳優として認知されても、いまだ「大きな夢や野望はない」という。

 

「大きな目標はずっとないんです。ただ、仕事をするたびに、『あの俳優はおもしろい』と共演者やスタッフに思われるような俳優ではいたいです。売れたという実感や狂騒こそないですが、いま50歳の自分が、どんな俳優になっていくか、それが楽しみなんです」

 

おかべたかし
1972年6月22日生まれ 和歌山県出身 24歳で俳優を志して上京し、劇団東京乾電池に所属。劇団退団後、山内ケンジ氏プロデュースの演劇ユニット「城山羊の会」を中心に活動。ドラマ『エルピス ー希望、あるいは災いー』(2022年、カンテレ)で演じたテレビプロデューサー・村井役で注目を集める。近年の出演作に『First Love 初恋』(2022年、Netflix)、『リバーサルオーケストラ』(2023年、日本テレビ)など。連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK)、Netflix映画『クレイジークルーズ』などの出演作が控えている

 

【やきとり 波田野】
住所/東京都杉並区永福3-34-9
営業時間/17:00~23:00
定休日/火曜

 

写真・野澤亘伸
ヘアメイク・氏川千尋

( 週刊FLASH 2023年5月23日号 )

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