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“青森の味”で年商65億円!地元民に愛される「奇跡のスーパー」&「伝説の逸品」<北海道・東北編>
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.12.10 06:00 最終更新日:2022.12.10 06:00
全国旅行支援が年明けから再始動へ。最新トレンドは土産店より「旅先スーパー」!山奥の個人店から “県民御用達” ローカルチェーンまで、スーパーマーケット研究家の菅原佳己さんに北海道・東北の名店を聞いた。
●<相沢食料百貨店/北海道・稚内市>
◎最北端の駅前に「目利きの相沢さん」あり
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日本最北端の駅、稚内駅の目の前。海産物卸業として創業し、今年でちょうど100年の歴史を刻むスーパーだ。
鮮度抜群のカニやウニなど、季節ごとに変わる地元価格の海の幸はもちろん、地元と全国の良品が揃うのが特長で、地元で「目利きの相沢さん」と呼ばれてきた。
美味しいと評判の惣菜は、2022年に「ご当地スーパーグランプリ」を獲得した自家製鮭粕漬焼入り特上幕の内弁当と、売りものにならない貝柱の端っこを使った貝柱おこわ弁当がベストセラー。どちらも、創業家である相沢さんのおばあちゃんの味。
隣町の猿払の名産品、ホタテが1個入ったまるごとほたてらぁめんや、甘く風味のよい稚内牛乳など、地域の名品も揃う。
●<ラッキー山の手店/北海道・札幌市>
道内に33店舗。札幌市内の文教地区にある山の手店は、道内外のこだわりの味が満載の店。
地元・池田食品の道産の大豆や、落花生を使った豆菓子、人気レストランの味を伝える百鬼ドレッシング(六花亭)などの定番も高品質。おしゃれなパッケージのいかめし(かくまん)や、缶入りのプレミアムバター(山中牧場)などは、お土産にもおすすめ。
●<カブセンター弘前店/青森県・弘前市>
食品スーパーやドラッグストアを県内外で21店舗展開する紅屋商事のうち、生鮮から薬まで揃う大型スーパー7店が「カブセンター」。りんごジュースの箱買いや、近海の魚介を自分で吟味して好きな数だけ選ぶのは当たり前。自家製惣菜の手作りイカメンチ、伝統の赤い甘口いなり寿司のあどはいなりなど青森の味を追求し、年商65億円を叩き出す。
●<エンドー/山形県・山形市>
居酒屋風の店内だが、昔から地元民が飲食し、交流してきたスーパーだ。げそ天専用カウンターでは、塩レモン味、チーズ、ピリ辛など11種の名物げそ天を注文。その場で、揚げたてのげそ天をつまみに一杯飲むもよし、山形県民の黄金のコンビネーション「そばとげそ天」を楽しむもよし。オーブンで温めればサクッと軽い食感の冷凍げそ天も人気。
●<スーパーオセン/岩手県・西和賀町>
地域独自のご馳走であるビスケットの天ぷら。具材となる「かーさんケット」(イトウ製菓)の在庫は欠かさない。天ぷらはもともと各家庭で作られるもので、ふだんは売り場に並ばないが、観光客が店で注文すれば、揚げてくれる。山の中なのに魚が新鮮で安く、遠方からも客が来る。コンビニのない西和賀町の食料庫的存在で、北上市にも店舗が。
●<主婦の店さいち/宮城県・仙台市>
◎毎日、おはぎを町の人口以上売る店
人口4700人の秋保町(現在は仙台市太白区)で、「おはぎの売り上げ2億円」「1日最高2万5000個売った」などの逸話を持つ、元祖・伝説のスーパー。 “仙台の奥座敷” 秋保温泉にある個人経営の店で、40年ほど前に近所の客の声に応えて手作りしたのが、さいちのおはぎ誕生のきっかけだ。
柔らかく煮上げた甘さ控えめのあんこで、もち米とうるち米を包んだおはぎは、ぺろりと胃に収まってしまう。添加物なし、砂糖少なめのため、消費期限は当日限り。
伝説はまだある。今までにさいちで学んだスーパーは600社以上。スーパーがこぞって自家製おはぎを売る理由だ。そして毎日、おはぎも惣菜も完売。じつは、惣菜もべらぼうにうまいのだ。
●<いとく鹿角ショッピングセンター/秋田県・鹿角市>
スーパーだけでなく大型ショッピングモールも運営し、秋田と青森に28店舗を展開。
鹿角はユネスコ世界無形文化遺産「花輪ばやし」の夏祭りで知られ、地元発ハヤシライスのレトルトである花輪ハヤシ(平和軒)が人気。発祥の地というだけあって、きりたんぽ(柳田きりたんぽ店)が焼きたてで提供されるなど、歴史の香るご当地食が揃う。
●<マルトSC平尼子(たいらあまこ)店/福島県・いわき市>
いわきを中心に、日立、水戸などに37店舗。平尼子店では、担当者が東京の名店「おにぎり浅草 宿六」に学び、炊飯、握り方、塩加減をマスター。「店内手作りおにぎり 又兵衛しまほっけ」は、「お弁当・お惣菜大賞2021」のおにぎり部門最優秀賞に輝いた。具は鮮魚部特製の人気商品、しまほっけの酒干しで、地酒・又兵衛(四家酒造店)の酒粕を使用した地元の味だ。
菅原さんの研究家への道を開いたのは、「せみ餃子」との出会いだーー。(以下、菅原さん)
きっかけは約30年前。夫の転勤で、東京を離れて暮らした愛知で見た光景でした。
後にこれこそが “ご当地感” だとわかったのですが、関東人好みの醤油せんべいは1種類のみ、あとは通路一列、全面がえびせんべいだったのです。
同じころ、旅先で手にした「せみ餃子」。関西人なら誰もが知る商品でも、当時「せみ」の由来は知られていませんでした。
そこで京都のメーカーに問い合わせてみると「うちー、珉珉(みんみん)食品いいますねん」。このときの「こんなおもしろい話、みんなに教えなきゃ!」という思いが、 “スーパーマーケット研究家” となるきっかけでした。
現在までに、47都道府県、800店以上のスーパーを訪ねました。そして新聞や雑誌、テレビなどを通して、全国のスーパーや、そこで買える地元食の魅力を発信しています。
財布の紐が堅くなる昨今ですが、各店の弁当、惣菜のレベルアップはすさまじく、「スーパーの惣菜でごめんね」の時代から、今では「あのスーパーの○○が食べたい」と、その地域の押しも押されもせぬ名物になっています。
私のように、わざわざ遠くのスーパーを訪れるファンは少なくありません。
たとえば、スズキヤ(神奈川)のお茶漬けも楽しめる「鮭と彩り野菜の茶々のり弁」や、主婦の店さいち(宮城)の、毎日、町の人口を上回る数が売れる「おはぎ」。そんな名物を手にしたときの喜びは、地元の人以上かも。
菅原佳己
スーパーマーケット研究家。執筆やテレビ出演、講演活動をこなしながら、自腹で全国のご当地スーパーを行脚。日常食を発掘し、魅力を伝えている。「朝日新聞」の『be』(土曜別刷り)で「お宝発見 ご当地食」を連載中。新刊に『47都道府県 日本全国地元食図鑑』(平凡社)
※今回紹介するご当地商品には、限定品や季節限定品など、現在は店頭にないものも一部含まれます。スーパーの独自商品以外の特定の商品やブランドを紹介する場合、メーカー名を明記しています。価格は取材当時のものです。
写真・菅原佳己(一部、スーパー運営会社より提供)