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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』精神科医が唸った“魂を揺さぶる”2022年の映画ベスト10

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.12.26 06:00 最終更新日:2022.12.26 06:00

樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』精神科医が唸った“魂を揺さぶる”2022年の映画ベスト10

カチンコ

 

■第5位『ハケンアニメ!』

 

「覇権アニメ」とは、各クールで最高視聴率を獲得したベストアニメのこと。そんな覇権アニメを目指して、庵野秀明監督を彷彿とさせる天才監督・王子(中村倫也)と、新人監督・瞳(吉岡里帆)の対決が描かれます。

 

 アニメ監督になるという夢を実現したはずの瞳ですが、頑張れば頑張るほどスタッフの協力は得られず空回りするだけ。しかし、やがて仲間が一人、二人と増えていき、最後にはチームが一丸となって瞳を応援するようになるのです。

 

 チームの仲間への配慮や思いやりを忘れず、お互いに支え合うことで、そのパワーは何倍にもなる。支え合うことこそが、真の成功法則であることに瞳は気づくのです。

 

■第6位『MEMORIA メモリア』

 

 コロンビアやタイなど7カ国の合作映画で、2021年カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。南米コロンビアを舞台に異国情緒が漂い、不思議な雰囲気に包まれた作品です。私はアート系映画をあまり観ないのですが、本作の予告編に魅了され、観に行きました。

 

 セリフが少なく、説明も最低限。アンドレイ・タルコフスキー監督の作品を彷彿とさせる透明感のある映像が、私たちの視覚と聴覚、振動覚を刺激し、原初からの「記憶(メモリア)」を呼び起こします。説明よりも「体感」の映画。最近の映画では珍しい、非言語的映像体験に魂が揺さぶられました。

 

■第7位『エルヴィス』

 

 エルヴィス・プレスリーの名前や楽曲を知らない人はいないでしょうが、彼の出自や生い立ちはあまり知られていません。白人でありながら、ゴスペル(黒人音楽)の影響を色濃く受けたエルヴィスですが、黒人の味方と見なされ、白人や当局からの露骨な嫌がらせ、バッシングを受けます。

 

 本作は、エルヴィスの半生を通して、壮絶な人種差別などアメリカの光と闇を年代記のように描いています。

 

 エルヴィス以上に印象に残るのが、名優トム・ハンクス。金のために人を売り飛ばす悪徳マネージャーを見るからに「悪辣」な表情で演じきったトム・ハンクスの演技力をあらためてすごいと思いました。

 

■第8位『窓辺にて』

 

 心を閉ざし創作意欲を失った元小説家のフリーライター(稲垣吾郎)。共感性のない彼は、「あること」を人に相談したいが、それができない……。「言葉にする」「言葉にできない」という言語化をテーマとした作品なのです。

 

 描写が淡々としていて、さしたるクライマックスもないのですが、徐々に人物像が浮き上がってくる展開に、観終わって数日後にジワッときました。

 

 稲垣吾郎の巧みな演技と、玉城ティナの鮮烈な存在感で魅せる、まさに大人のラブストーリーです。本作、そして『愛がなんだ』『街の上で』の今泉力哉監督は、注目すべき一人です。

 

■第9位『ベルファスト』

 

 アカデミー賞7部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した、ケネス・ブラナー監督の自伝的作品です。舞台は、1969年の北アイルランドの首府ベルファスト。あるとき、プロテスタントの暴徒がカトリックの住民を攻撃してきたことから、平和だった町が2つに分断され、主人公の少年の一家も新天地への移動を決断する……。

 

 当時の町並み、風景の再現度も高く、「こんな時代があったのか」と驚き、引き込まれる作品です。

 

■第10位『今夜、世界からこの恋が消えても』

 

 眠りにつくと記憶を失ってしまう女子高生(福本莉子)と同級生(道枝駿佑)の恋、と書くと、またベタな恋愛映画に思われますが、じつは大違い。

 

 主人公のメイン・ストーリーを、恋人、友人、家族などそれぞれの視点で語ることで、主人公を支え、寄り添う人たちの物語という、まったく別な感動が浮かび上がる……。こうした、時間軸が入り組んだ手の込んだ脚本は、私の大好きなパターンです。

 

かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動

 

イラスト・浜本ひろし

( 週刊FLASH 2023年1月3・10・17日合併号 )

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