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世田谷が都内「地価下落ワースト10」を独占…やっぱり「駅遠」は不便すぎた!

ライフ・マネー 投稿日:2021.10.22 06:00FLASH編集部

世田谷が都内「地価下落ワースト10」を独占…やっぱり「駅遠」は不便すぎた!

世田谷区の住宅街を一望

 

「昭和37年からここに土地を持っていて、家を建てたのは、平成元年だったかしら。前は赤坂に住んでて、引っ越してきたの。“フタコ” はずいぶん変わったけど、このあたりは長閑(のどか)なものよ〜」

 

 9月21日、東京都が都内の基準地価(7月1日時点)を発表した。そんななか、下落率のワースト10すべてを世田谷区の街が占めたことが話題になっている。

 

 

 10月某日、下落率が2.0%と、23区最大を記録した岡本3丁目を訪ねると、立派な2階建ての自宅の庭を手入れしていた女性が、冒頭のように話してくれた。

 

 古くからの住民は “ニコタマ” ではなく “フタコ” と呼ぶ東急電鉄の二子玉川駅から徒歩約30分。どの家にもガレージには高級車が停められ、近くの東名高速の高架の向こうには、広大な砧(きぬた)公園が広がっている。

 

 岡本といえば、松任谷由実を筆頭に、名だたる芸能人が住んでいる、東京でも有数の高級住宅地だ。しかし、交通の便は悪く、コンビニも近くにない。利便性に欠けるのだ。

 

「3丁目は過渡期にあるんでしょうね」

 

 そう語るのは、東京・神保町の老舗である芳賀書店の3代目、芳賀英紀さん(40)だ。芳賀さんは、岡本3丁目に隣接する2丁目に40年間暮らす。2丁目は、3丁目と違って地価が0.57%上がっており、その理由をこう分析する。

 

「岡本2丁目は、すでに開発が一巡した宅地なんです。まとまった土地が空くと、そこに高級老人ホームなどが建ったりしています。3丁目も今後、さらに再開発があるのかもしれません」

 

 世田谷区といっても広い。明大前や下北沢など若者が集う「北沢地域」、ボロ市で知られる上町など古くからの住民が居を構える「世田谷地域」、自由が丘や二子玉川などセレブタウンが点在する「玉川地域」など、さまざまな顔を持つ。なぜ、そんな世田谷区でばかり地価が下がるのか。

 

地価下落ワースト10

 

「“ワースト10” の地域を見ると、新興のデベロッパーによって散発的に開発されてしまった街が多い印象です」

 

 住宅ジャーナリストの山下和之氏(69)がそう指摘する。

 

「ワースト10に入った街は、すべて第一種低層住居専用地域です。これは、建物の高さを10mまたは12mに制限するなど、もっとも規制が厳しいものです」(山下氏)

 

 であれば、良好な住環境が守られた “セレブ住宅地” の証しであるはずだが……。

 

「しかし、残念ながらこれらの地域は、計画的な開発がなされる “背骨の通った街” とはいえません。いま、一棟を何棟もの戸建てに分割し、新たに分譲するデベロッパーがこれらのエリアにも進出しています。しかし、それでは街並みが変わり、保たれてきた高級感が失われてしまいます。住民からも反発があるでしょう」(山下氏)

 

 一方、これらと対照的なのが、田園調布や成城学園だ。

 

「これらの歴史ある住宅街は、住民間で受け継がれた協定『田園調布憲章』『成城憲章』があります。土地を分割して売ることができないので、価値が目減りせず、地価もほぼ下がらないのです」(山下氏)

 

 岡本3丁目の空撮写真を見ると、お金持ちが相続税の支払いのために手放したのか、土地が分割され、複数の戸建てが建てられたエリアがある。

 

 ほかの街ならば十分な “豪邸” だが、100坪級のお屋敷が並ぶなかでは、 “庶民的” に見えてしまうのは否めない。山下氏が続ける。

 

「首都圏の高級住宅地に目を向けると、神奈川県の鎌倉では、人気の西鎌倉のほか、世田谷区と同様、駅から離れた鎌倉山などの地域で、地価が2%以上も下落する動きが見られます。買いどきといえるかもしれません」

 

 昭和の御世のサラリーマンなら、いかに “駅遠” でもバス便を頼りに、緑豊かな環境にマイホームを構えたものだ。

 

 しかし近年では、運転手を雇えるレベルでもなければ、“駅や商圏に至近” というのが、家選びの条件となっていたのだろう。だが、前出の芳賀氏はこう言って笑う。

 

「僕は、 コロナ禍になって特に “駅遠” でかえってよかったと思いますよ。僕は歩いて岡本から通勤していますが、気分をリセットできて快適です。“フタコ” 周辺は再開発の結果、かなり “よそいき” になったけど、そこから古い商店街を抜け宅地に入ると、じつにゆったりした空気が流れているんです」

 

 たしかに昨今では、テレワークが普及し、駅から多少歩いても広い間取りの物件が売れ始めているという。この機に、憧れの “岡本ライフ” を……なんて、とてもじゃないが手が届かないのだけど――。

 

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