底が見えない政治家と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の蜜月問題。自民党は9月8日に、所属国会議員の調査結果を公表したが、その後も公表外の“統一教会との接点”が、次々に指摘される始末だ。
「各社世論調査で内閣への不支持が支持を上回るようになり、『毎日新聞』に至っては“危険水域”といえる支持率20パーセント台を報じています。『ポスト岸田』という話が出てきても、なんら不思議ではありません」
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こう話すのは、政治アナリストの伊藤惇夫氏だ。急速に「政局」の気配が漂っているが、苦境に立つ岸田文雄首相(65)の後継候補として挙がるのは、いささか物足りない名前ばかり。伊藤氏が続ける。
「現幹事長で、自ら派閥を持つ茂木敏充氏は今ひとつ人望がありませんし、萩生田光一政調会長や下村博文元文科大臣らを擁する安倍派は、統一教会報道で大ダメージを受けました。高市早苗経済安保大臣も、安倍晋三元首相の後ろ盾がなければ厳しい。『岸田首相のほうがマシ』と言わざるを得ないくらいですよ」
自民党の“地盤沈下”を起こした統一教会問題のなか、次期総裁レースで“一人勝ち”状態なのが、消費者担当大臣なども兼任する河野太郎デジタル大臣(59)だ。
統一教会への批判が高まるなか、8月12日に河野氏は「消費者庁として一度締め直さなければならない」と発言。煮え切らない態度の政権与党とは一線を画す、毅然とした対応を見せた。
「その後のテレビ番組で『宗教団体の解散命令』にも言及しましたが、岸田首相の側近は『河野氏がここまで踏み込んで発言するとは政府も知らなかった』と話すなど、困惑が広がりました」(政治部デスク)
’21年9月の自民党総裁選に出馬し、岸田首相との決選投票では大差で敗れた河野氏。原因は自民党内に根強い“河野アレルギー”といわれた。
「行動力があるし、筋も通っている。それが国民人気の理由だと思います。でも、党内では『またスタンドプレーか…』というのが本音です。そういう性格は直りようがない」
自民党の中堅議員はこう打ち明ける。河野氏の“猪突猛進”にもっとも慄いたのは、親玉を失った清和会の議員たちだ。
「生前、安倍元首相は“河野首相”に強い拒絶反応を示していました。そのため安倍派を中心に“反河野”が多いんです。そんななか、安倍派議員が多く関わっている統一教会問題を追及していることに『これは安倍派への間接的な攻撃だ』『いい反撃材料を見つけやがって』と、やっかむ声が上がっています。次期総裁争いで追い抜かれそうな茂木氏の周辺も、今回、河野氏が名を上げたことに、いい思いはありません」(自民党関係者)
国民的人気はあるが、党内人気がない。これまで2度総裁選で敗れている河野氏には、3度総裁選で敗れた石破茂元幹事長(65)と、同じ匂いを感じてしまう。しかし、それも潮目が変わりつつあるという。
「最近では、2年以上も派閥横断の昼食会を続けていて、当選4回以下の若手議員を中心に十数人が参加しています。先の総裁選では所属派閥の候補を差し置いて、河野氏を応援した議員もいました。そうした“下への気配り”は、麻生太郎氏の教えの賜物です。『派閥の若いやつの面倒を見ろ』という麻生氏の助言を聞き、盛んに会食を重ねています。麻生派幹部は『派内の“アレルギー”はだいぶ薄れた』と話しています」(前出・政治部デスク)
さらに、好都合なのが“2枚めの後ろ盾”を持つことだ。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう話す。
「菅義偉前首相はかなり前から『河野は将来の総理候補だ』と名前を挙げています。菅前首相は『霞が関を壊す』というタイプの改革派で、その点は河野氏と一致します。近々、勉強会立ち上げが噂される菅前首相は、石破氏とも連携を深めようとしている。さらに、二階派の一部を掌握しているも同然で、岸田首相の退陣となれば、河野氏中心に政局を動かす力は十分につけています」
“統一退治”に動きだした太郎が自民党の英雄になる日は来るのか。
写真・つのだよしお/アフロ、ロイター/アフロ