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野球と政治、4つの共通点「岸田総理は岡田監督から学んだらどうや」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第15回】

社会・政治 投稿日:2023.09.01 06:00FLASH編集部

野球と政治、4つの共通点「岸田総理は岡田監督から学んだらどうや」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第15回】

8月25日時点では優勝マジック22が点灯していた。「岡田監督の采配は、感情ではなく合理的な判断やとわかっているから、選手もついてくるんでしょう」(写真・共同通信)

 

 もう「禁断の2文字」を解禁してもええかな。8月25日、阪神は横浜DeNAに連勝し、優勝マジックは「22」に。ずっと言いたくても抑えてきた「優勝」という言葉を、今いまなら口にしても、誰も文句は言わんでしょう。

 

 阪神は1962年、1964年、1985年、2003年、2005年にリーグ優勝し、1985年は日本一になった。当時、私は22歳の大学生で、4月17日の試合はとくに印象に残っています。

 

 当時のクリーンアップのバース、掛布雅之、岡田彰布(現監督)が、巨人の槙原寛己投手相手に3者連続でバックスクリーンに特大本塁打を打った試合です。1985年以来、38年ぶりの日本一の瞬間を、やっぱりこの目で見てみたいわ。

 

 

 阪神に注目するのは、私がファンやからというだけではない。野球と政治には、多くの共通点があるんです。それは「目的」「人事」「戦略」「結果」の4点に集約されると考えます。

 

 まず「目的」。岡田監督はキャンプの初日から「アレ」という言葉を使って、優勝を目指すと公言した。強い決意が、「アレ」という言葉として表われたのでしょう。「優勝」と5回繰り返すよりも、「アレ」の2文字のほうがずっと印象に残りますわな。

 

 岡田監督は、2005年に監督として優勝しましたが、日本シリーズでは4連敗とボロ負けした。リベンジを期した2008年には、2位の巨人に一時、13ゲーム差をつけながら、最後に大逆転された。岡田監督の心中には、栄光と屈辱がある。それが今回、監督に復帰して、何がなんでも優勝してやるという気迫につながっていると思うんです。

 

 明石市長のときの私の目的は、「明石を優しく元気な街」にすることでした。それに基づき、改革をおこないました。

 

 岡田監督が過去の屈辱をバネにしたように、私も子ども時代の差別や貧困、理不尽な思いをした経験が原点になっている。強烈な目的意識があるからこそ、それを実現しようとさまざまな戦略が出てくるんです。目的意識なくしては、何も前に進まない。

 

 その視点で国政を見てみると、ほとんどの国会議員はなんの目的意識もなく、ただ政治家を続けられればいいとか、総理大臣になれたらいいという程度。国民の生活を助けたいという強い志を持っている政治家は、ほとんど見当たらないのは残念です。

 

 次に「人事」。その要諦とされるのが「適材適所」。さらに私は「適時」を加え、相応しいときに、その部署に必要な人材を配置しました。

 

 岡田監督の選手起用は、非常にシンプル。打順や守備をコロコロ変えたりせず、適材適所の起用。それが選手に安心感を与え、監督への信頼を生んでいると思います。

 

 ときに、岡田監督は非情な采配をする。4月12日の巨人戦で先発した村上頌樹(しょうき)投手は、7回まで巨人打線をパーフェクトに抑えていた。ところが、8回、岡田監督は村上に代打を送りました。

 

 村上の完全試合達成を期待していたファンも多かったでしょう。しかし、岡田監督は村上の球威が落ちてきたことを察知し、継投を選んだ。監督としては、適切な判断やったと思います。

 

 私も、個人の情を捨てて合理的に判断していた。市役所では、典型的な年功序列の慣行がありましたが、私はそれを排除し、従来は58、59歳で部長と暗黙裡に決まっていたのを、50歳でも部長になれるようにした。50歳手前で課長という決まりもなくし、30代で続々抜擢した。

 

 逆に言えば、年長者でも課長や部長になれない人が出てきた。適材適所の人事は、ある意味、情に反する部分があるんです。

 

 そして「戦略」。岡田監督の戦略は、じつはものすごく合理的です。確率論的に、どっちのほうが可能性が大きいかを判断の基準にしている。

 

 一方で、臨機応変な考え方をするのも特徴。確率論を重視するといっても、かつての野村克也監督のようなデータ野球ではない。データは頭の中に入れながら、ベンチに持ち込まないという方針。「球が走っているか」など選手の状態を見て、その時々で柔軟な戦略を取っている。

 

 そして冒険はしない。だから、無理に盗塁はさせない。一発を狙えばファンにとっておもしろい場面でも、手堅く行く。あくまで勝利にこだわる。勝つことこそが、本当のファンサービスやということを知っているんです。

 

 明石市で私が取った戦略も、オーソドックスなものでした。よく明石の政策は「全国初」といわれますが、養育費の立て替えにしても、じつは、ほかの先進国でやっている当たり前の政策を、明石流にアレンジしただけ。

 

 ポイントは、戦略を考えるときにどこを見るか。岡田監督は当然、選手の調子を見て、戦略を練る。それが功を奏していると思います。私は、市民を見て政策立案していました。

 

 その点、国会議員は国民を見るべき立場なのに、業界と官僚の顔色をうかがっている状況。万年Bクラスの監督のようなもんよ。

 

 最後の「結果」。明確な目的があっても、結果が出ないと人は信用しません。いまの岡田阪神が支持を集めているのは、長く勝てない状況が続いたなか、ついに18年ぶりの優勝が見えてきたからです。

 

 明石市も同じ。人口減少、財政赤字、駅前衰退の三重苦に陥っていた街が、私が市長になった1年めに財政黒字に、3年めには人口増に転じた。すると、市役所の中枢の職員が私についてくるようになり、市民の応援も増えた。やっぱり結果第一やね。

 

 ところが国政に目を転じれば、30年間給料は上がらず経済成長もせず、おまけに増税、保険料上乗せと、国民の負担だけが膨らんでいる。結果がまったく出ていない。

 

 野球の監督も政治家も、結果責任。結果を出せない岸田総理は、岡田監督から少しは学んだらどうや。

( 週刊FLASH 2023年9月12日号 )

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